#4 ゴキブリがでてもだいじょうぶですよ

サワディーカップ、バンコクに住んでいるいしいです。

前回少し紹介した「トレインマーケット」は、6/2をもって閉鎖となりました。詳しい事情は知りませんが、もともと土地を所有していた国鉄がトレインマーケットとして使われていた場所の返還を求めたからとか。先月に石野卓球がライブを行った、SFチックな外観で有名なバンコクにあるクラブ「BED SUPPERCLUB」は経営不振などの理由で8月いっぱいをもってオープンから11年の歴史に幕を閉じます。
都心部の駅周辺は開発が進み、古いものがどんどんと新しいものへとすげ変えられたり、移動したりするさまに都市の新陳代謝の激しさを感じさせられます。

僕の住処も、バンコクに来てから既に2軒目となりました。
最初の一ヶ月間は知人のシェアハウスで、リビングのソファーを寝床にした、典型的な居候スタイルで住まわせてもらっていました。そこは建物のところどころに小さな隙間があり、いろんな虫が人間以上に自由に出入りしていました。

バンコクでの生活をはじめてから20日目くらいのある日、家の中で、ゴキブリが足下をフラフラと散歩しているのを見かけました。日本で生活していた頃だったらあわてて外に追い出していたかもしれませんが、その家では日頃よく目にする光景だったので、いつも通り、気にも留めていませんでした。
昼頃、壁際で仰向けになり、力なく脚をバタバタとさせて、まさに虫の息になっているのを発見。そんなにたくさんのゴキブリを家の中で見かけることはなかったので、午前中に散歩していたのと同じ個体だと思われるものの、一体この3,4時間の間に何が起きたのかは見当もつきません。ゴキブリの蘇生術なんて知らないので、そっと見守ることしかできないでいると、やがてわずかに動いていた脚も静止。天に召されたのでしょう。
お墓を作ってあげるほど思い入れもないし、掃除するのも面倒くさい。幸運にも家の隅っこで亡くなったので邪魔にもならず、そのまま死骸の処理は自然に任せることにしました。

その家ではゴキブリ以上にアリをよく見かけました。
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ポテトチップスの食べカスに群がるアリ

台所に食べカスなどがあると、翌朝には隙間があると思われる天井付近から、小さなアリが何メートルも行列を作っていることは毎日のようにありました。500mlペットボトルのコカコーラを飲んでいる数分の間で、テーブルの上に置いたフタにたくさんのアリが群がっていたことも。ゴキブリはただ這い回っているだけだから良いけれど、アリは食べ物に群がって来るのでかなり鬱陶しい存在でした。

このときも夜中になると、いつの間にやらゴキブリの死骸とどこかを結ぶアリの長蛇の列ができていて、少しずつ死骸の体積を減らしていました。そこにゴキブリの死骸がある限り、側でコカコーラを飲んでいても、アリたちはこちらに目もくれず、一心にゴキブリと、どこかにある巣とを行き来していました。
翌朝になるとアリの行列はなくなり、残ったのは固い部分を残し、枯れ葉のように平らになったゴキブリの死骸だけでした。

一匹の虫が死に、他の虫の食料となり、死骸がやがて残骸へと変わるという出来事が、まるで教育番組の早回し映像のように一日のうちに、しかも家の中で起きるということが僕の中ではものすごく衝撃的でした。しかし、そのときの同居人に聞くと、頻繁にある出来事とのこと。

アリは食べ物だけでなく、暖かいところに集まる習性があるらしく、電源の入ったノートパソコンにもたかってきました。テキストを打っている最中でも、キーボードの隙間をモグラ叩きのように出たり入ったり繰り返します。スリープ状態で外出をすると、帰宅後にノートパソコンを開いたときに無数のアリが中からわらわらと出てくるので、使用後は電源を落とすのを忘れてはいけません。キーボードの隙間だけでなく、側面のLAN、USBポート類からも出入りをしていて、一番人気が集中していたFireWireボートは満員状態でした。

さすがに気持ち悪いし、なによりノートパソコンが故障してしまったらインターネットができなくなって僕が死んじゃう。殺虫剤をかけてそれが原因で壊れたらやだなと躊躇していたのですが、そうも言ってられない状況になってきたので、迎撃体勢を整えるためにスーパーへ行ってみました。
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洗剤やトイレットペーパーなどが並ぶ日用品コーナーの一角に、いかにも禍々しい見た目をした殺虫剤の棚があります。一生分はありそうなサイズのスプレー缶が並ぶなかに手頃なサイズのものを見つけ、試しにそれを購入してみました。
ラベルには日本語で注意書きがあり「人間の手足に塗ることで虫除けとなる」とのこと。人体に塗っても問題がないのだから、殺虫効果も生温いものなのかもしれない。これで撃退できないようだったらもっと強そうなものを買おう、そう心に決めて帰宅し、コカコーラを飲んでいると、いつものようにペットボトルのフタにアリが群がってきます。ちょうどいいので、この目の前のアリたちでもって殺虫剤の威力を試してみることにしました。

ひと吹きでアリの動きは遅くなり、数回吹きかけたら数匹を除いて完全に動きを止めました。爽やかなグリーンのラベル、握り手にフィットする、なんとかビリティが高そうなボトルの形状に反して内容液はけっこう強烈な匂いがします。単に液体で溺れ死んだやつらもいるだろうけれど、対アリの殺傷能力は結構高そうです。
これを直接ノートパソコンに吹きかけるのは気が引けるので、数回吹き付けたティッシュペーパーで全体をくまなく拭いてみました。すると、電源をいれたまま放っておいても全然アリが寄って来なくなりました。拭いた直後は殺虫剤のクスリっぽい匂いがきついけれど、時間の経過とともに薄れてきます。自分自身が慣れて匂いが気にならなくなっただけなのかは分からないけれど、全く匂いを感じなくなっても効果は持続しているみたいで、それ以後アリに悩まされることはなくなりました。

みなさんも、パソコンにアリがたかってきたら試してみてください。


今回のおすすめTEE

ありさんぽ、ちちち
ありさんぽ、ちちち / 坂本渉太

こんなふうに、アリと仲良くできたらいいのにな。

画・文 : いしいこうた

        
いしいこうた
いしいこうた
1988年生まれ。編集者。Webマガジンの編集などを経て2013年3月より意味もなくバンコクへ引っ越す。編著書に『GIF BOOK』(BNN新社)など。このサイトの管理も担当。