大阪と東京に離れて暮らすチャンキー松本&犬んこ夫妻の奏でるけもじストーリーですよ   ( 第1回から読む )

第9回 なまけもじ


30歳前後から10年以上、僕は人前でなんらかの芸をしてきました。

バンドをやったり、パフォーマンスしたりで舞台に立ちましたが、毎回緊張しますし、いつも良い結果なわけでもありませんでしたが、そこでたくさんの経験をさせてもらったことは、今の僕の大きな力となっています。

慣れない頃はとにかく精一杯やるしかありませんでした。
〝 関西ノリだね、サービス精神旺盛だね 〟と言われることも多かったのですが、それは芸に自信がないからなのです。
サービスというよりも、変な「間」が怖いから、必死になって次から次へ埋めていたのです。誰だって最初はそんなものでしょう。

でもさすがに10年以上も舞台に立っていると少しは慣れて、芸に「ひき」が必要なことも理解できるようになります。
お客さまには、お腹一杯になってもらうよりも、適度な量でおいしく感じてもらうことの大切さを知るわけです。そして肉体も40を過ぎて衰えも出て、嫌でもひかざるを得なくなってきたのもあります。

 
春から、大阪・奈良・鎌倉と「なまけもじショー」をやってきて、毎回お客さまが面白がってくれているのが嬉しいのですが、僕はといえば、この舞台(白い布団の上)で何の芸をすることもなく、ただただ仰向けになっているだけ…。
舞台が終わっても、動き回り汗だくで唄った時のような爽快感は微塵もありません。ここでの私の役割は「毛モデル」、「毛タレ」なのです。

妻が一人、私の毛で文字を描くという芸をしてくれています。
私的にはひき芸どころか、何もしないのですから「どこまでひいとんねん!」と自分を突っ込みたくもなります。

以前の私がピン芸人とすれば、今は相方を見つけ漫才をやりだしたような…言ってみれば「なまけもじショー」とはメオト漫才?なのかもしれません。

大勢のお客さまが、僕の頭上をみて笑ったり感心したりする姿を、布団に寝ながら見ている…この風景を僕以外の人は見ることができません。なんだかおいしいところを独り占めしている気分になります。でも逆にボクの毛が今どんな文字を生み出しているのか、その過程を僕だけが見れないのですから悔しい気分にもなります。

芸とは自分では見ることができないからこそ、どこまでも精進できるのかもしれません。メオト漫才ならぬ「なまけもじショー」という芸を、これからどう精進したら良いか、正直わからないのですが…頑張ってみます!

寝てるだけですが。

 
 
チャンキー松本

 
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写真・文 : 青空亭 (チャンキー松本・いぬんこ)

        
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青空亭(チャンキー松本・いぬんこ)
アーティスト、チャンキー松本と挿絵師いぬんこの夫婦ユニット。 チャンキー松本/イラストレーター/切り似顔絵師。著書に「まるい家」「宇宙船イヌミ」他。 http://kamikirichanky.blogspot.jp/ いぬんこ/挿絵師。NHKこども番組「シャキーン!」他、雑誌や装画等に絵を描く。著書に「おかめ列車」他。 http://inunco.blogspot.jp/

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