大阪と東京に離れて暮らすチャンキー松本&犬んこ夫妻の奏でるけもじストーリーですよ ( 第1回から読む )
第8回 ほとけ
ボクは8月の中頃から3週間近く、東京西荻の妻の家で暮らしていました。そして明日は、いよいよ東京から大阪へ帰る日の前日のことです。
朝からたわいもないことでケンカをしてしまい暗い気分のボクと妻。
昼になって部屋の温度は上がり、暑くて苦しくなったボクらは、
近くのファミレスに非難しました。
ドリンクバーを頼んで妻は仕事をし、ボクは眠っておりましたが、さすがに夕方になったので店からでました。すると妻は駅前にある友人が経営している古本屋へ新装開店したお祝いのお酒を持って行く、、と言います。
ケンカの後味の悪さが残っていたボクは「いかない」ことにして、妻とは出てきたファミレスの前で別れました。
夕方だというのに太陽の光が強く歩くのも疲れます。しばらくすると目の前に大きな赤い鳥居が見えました。参道は高い樹々に囲まれていて涼しそうだからとお参りにいきました。
関西ではもう聞けなくなった、ミンミン蝉やツクツクボウシがワンワン鳴いています。
さて?なにをお願いしようかなと考えたのですが、けっきょく東京で暮らす妻の安全祈願にしました。
「さっきは言い過ぎたなあ」と反省する心になったボクは、あとで妻と仲直りしょうと思いながら神社を後にしますと、偶然にもビールを買って自転車に乗った妻に道でバッタリ出会いました。
そこでなんとなく握手をして仲直りし、自転車に2人乗りしながら街の中を走っていました。今度は妻がクッキー屋さんを見つけ「ちょっと待っていて」とクッキーを買いにゆきました。
ボクが店先で自転車を止めボケ~と立っていますと、歩道を挟んだ道向こうに、もう半分廃墟化したような古い大きな建物が見えました。その家の前には白いバンが止まっていて荷台の扉が開いています。しばらくすると、玄関からストレッチャーにのって白い布にグルグル巻かれた中身はきっと人?が運び出され、バンの荷台へ積み込まれてゆきます。
荷台の周りを白いシャツと黒いズボン姿の男性4、5人が手を合わせて合掌しているのが見えたので、これは…と、ボクも妻もいっしょに合掌させてもらいました。暑い気温の中での非日常な光景とはうらはらに、通りには少し異臭が漂い生々しい気分になりました。
また2人乗りしながら坂道を走っていますと、陶芸屋のお店の前でご主人が道具になにかを吹き付ける作業をしているのが見えました。きっとそれは美しい形となって蘇り、店先に並ぶ商品になるのでしょう。
また坂道を2人乗りで登ると汗が吹き出てきます。
涼ませてもらおうと古本屋へ入ると先客がいらして、オーナーさんと話し込まれていました。
妻がそっと挨拶するとオーナーさんは先客の男性に妻を紹介していました。「大阪からこちらに来ているんですよ」と話すと、
その男性は急に
「ボクは大阪が苦手なんだよ。大阪人って自分のことを強くアピールするでしょ、お金にがめついし、、嫌なんだよね。」
ボクだけが後方でその会話を聞いていたのですが、東京で妻はこんな経験もしているのだなあと可哀想に感じました。
そのあとCDショップへ寄りました。妻は前日に読んだ本の影響でハワイアンのCDを欲しがりました。その本は10年前に亡くなったミュージシャン「どんと」の奥様である「さちほさん」が書いた本でした。
愛する人を急に亡くし、のこされた人がどうやってその傷を癒していったのか?が本には書かれています。「どんと」がお亡くなりになったのもハワイで、さちほさんもハワイに導かれていました。ボクらは暑い夏の夜のBGMはハワイアンもイイねということでCDを買いました。
陽が暮れても気温は下がりませんし、風もそんなに吹きません。なんとなく空を見上げますととても大きな満月が輝いているのが見え、妻がアイフォンで満月の画像を撮っていました。
もう1日だけ東京にいよう…とボクは思ったのです。
チャンキー松本