お金がかからなくて空いてて面白い公共施設=ハコモノを求めて節約ミセスが子連れで日本中をうろちょろしまーす!   ( 第1回から読む )

第18回 国立民族学博物館(後編)

前回までのあらすじ……「オセアニア」「アメリカ」ゾーンを回ったところで精霊にわんさか出会いすぎた子供が疲れてしまったので、他の地域は1人で見て回ることにしましたよ。まずは「ヨーロッパ」ゾーンから。

014
クリスマスから元旦にかけて路上で行われるルーマニアの民衆劇「ビフライム」の仮面。羊などの動物を模しているらしく、かなりモコモコです。悪霊を追い払う心強い草食系仮面ですが、怖い仮面をさんざん見慣れた後だったので、「さすがヨーロッパ!ボア使いがリッチでカワイイ〜」という間違った感想に。

024
謝肉祭の仮面「シューラー」(中央)と「ローラ」(右)。キリスト教行事の中でも民衆的要素が強いお祭りだそうで、現代日本のage嬢に通ずる大衆性を感じます。まつげの代わりにヒゲを巻いて盛って。

続いて「アフリカ」ゾーン。

03e
ビーズ手芸に対するカワイイ幻想を打ち砕くカメルーン・バミレケ族のビーズ人像。これまで母として、そして女として、いろんなビーズ遊びを通過してきましたが、こんなにおっかないビーズ細工は初めてだ!

045
バミレケ族ではビーズは富の象徴なのだそうで、首長用の足置き台や帽子にもビーズがびっしり。ヒルズ族にとってのホームシアターみたいなもの? アフリカの大地にはビーズの鳥を頭に載せたオッチャンが合コンで1人勝ちする世界が広がっているのでしょうか。

056
ガーナのファンティ族の軍旗。軍旗なのにアップリケのせいか、ぬぐいがたいかわいらしさを放っています。近隣民族と対抗するため、イギリスの軍隊や制度を取り入れて町ごとに軍事部隊を組織していたファンティの人々。ユニオンジャックも強さの象徴として取り入れていたようです。アップリケで。手芸が男らしさと富の象徴として機能する世界。

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ザンビア・ルヴァレでの成人式に使われる仮装「マキシ」。少年達は10歳前後になると森に隔離され、仮面をかぶった大人たちから男として、夫としての役割についての講義を受けます。マキシは少年たちの世話や手助けをする先祖の霊の象徴で、たぶん半分は優しさでできています。

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こちらは少年達を折檻する役「チクザ」。こんなのに折檻されるなんてシュール体験すぎて、大人への階段を一気に上らざるをえないですよね……。

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ザンビア・チェワ族に伝わる死者を弔う儀式「ニャウ」の踊り手。死者の化身だそうです。説明文が男女に分かれていて面白いので以下引用。「ニャウは人間が仮面をかぶったものだ。そのことは女性や子供たちには秘密にしている。仮面をかぶれるのは、おれたち、ニャウの結社のメンバーだけだ。仮面をかぶって踊ると、死者の霊が、踊っている者の体にとりつく。だから、ニャウと村人が一緒に楽しむことで、死者の霊が慰められ、祖先の世界に送り届けられるのだ」。一方、女性の意見「じつはわたしたちも、男たちが仮面をかぶって踊っているのだということは、うすうす知っている。でも、そんなことはけっして口にしない」。男の顔を立ててキャー言ってやってんのヨ、という感じですか。ザンビア女子、女子力高い!

続いて「東南アジア」ゾーン。

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フィリピンの乗り合いバス「ジープニー」。払い下げられたアメリカの軍用ジープを改造した結果、たいそうデコラティブな装備に。ヒカリモノだからってミラー盛りすぎ。東南アジアゾーンには日本におけるヤン車、デコトラ的な派手な乗り物がいくつか展示されています。日本との違いは個人じゃなくてトップメーカーがやっているところでしょうか。

続いて「中央アジア」ゾーン。

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中央アジア・ウズベクのオアシスに住む農民の住居。こちらは女性の部屋です。つくりつけの食器棚もかわいいですなあ。狭いのが難ですが、右側にはこたつもあり、こたつ半径1メートルから出たがらない人にはちょうどいいかも。

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シベリアの精霊像。中央のひときわでかい像はウデヘイ族のもの。おなかに空洞があるのは近づく悪霊をムシャムシャ食べるため、だそう。

続いて「東アジア」ゾーン。

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韓国の死者運搬用輿「喪輿(サンヨ)」。日本の霊柩車を彷彿とさせなくもないギラギラ感。乗り物を派手にデコるのはアジアの血なのでしょうか。

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韓国の子供文化。日本のアニメ雑誌や漫画雑誌が人気みたいです。このほかにもCLAMPの『東京BABYLON』が展示されていました。オタ加減もファンシーさ加減も日本そっくり。さすがお隣の国。

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昭和50年代の『りぼん』の付録ノートみたいですが、韓国のキリスト教グッズです。線を重ねた目と中央にのどぼとけが浮かんだ大きな口で笑顔を表すという懐かしい少女マンガイラストにここで出会えるとは思っていませんでした。ハングルもなんだか昭和の丸文字っぽい。

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台湾原住民・ブヌン族の絵暦。数字ではなく、「イノシシをつかまえる」「鹿の耳を打つ」「カゴの中のイモ」といった生活の中のできごとを基準に木に刻み、行事を行う時期を決めていたそうです。個人的にはゾクゾクするくらい大好きです。自分でもつけたい。

ついに最後、「日本」ゾーンです。

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日本のお祭り道具がずらり。この流れでみると日本の美意識って侘びでも寂びでもなく、キラキラデコ盛り上等でアジアの一部なんだなあと実感します。

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長野オリンピックの開会式に登場し、世界の人々の度肝をぬいた長野県・大岡の道祖神。わらだけなのにすごい造形力! マニアックなしめ縄コレクションを文字通りシメています。こちらはレプリカですが、できれば現地をふらりと歩いてるときにいきなり出会ってびっくりしたい。

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愛知県・祖父江の虫送り行事に使われる「実盛人形」。稲の切り株に馬の足を取られて討ち死にしたことから稲を恨んで害虫になった武将・齋藤別当実盛の怨霊を鎮めて、害虫の大発生を防ごうという趣旨の行事だそう。まさか死後、害虫扱いされることになるとは思わなかっただろうなあ。武将なのに。

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新潟県・鹿瀬の「しょうき人形」。男性器を誇張したワラ人形を作成し、一年間の五穀豊穣や子宝を願います。

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新潟県・佐渡の「のろま人形」。幕間狂言として上演される人形劇のキャラクターです。巨大な男性器の持ち主で、最後にイチモツを出して放尿して幕、みたいな下世話な劇だったそうです。日本人は男性器が好きすぎる! ムッツリスケベ大国ですね。

まとめ

日本人は放っておくとすぐヤンキーになる、といったのは誰だったか。確かにあまり自意識に縛られていない人々からは、デコればデコるほど、カラフルであればあるほど、盛れば盛るほどいい、というナチュラルな美意識を感じます。そういう意味では世界の民衆文化を重点的に集めたこちらは、「霊長類ヒト科は放っておくとどうなるのか」というのを一堂に会して見せる、すごい博物館なのかもしれません。地域や食性や気候によって違いはあれども、みんなデコって盛って怒って笑って威嚇して祈って、大らかに生を全うしていたようです。もしも娘がギャルに育ってまつげをケムンパスにしたとしても、「これぞヒト科本来の姿」と寛容なまなざしで見られそうです。

国立民族学博物館
住所 大阪府吹田市千里万博公園10-1
交通 大阪モノレール「万博記念公園駅」徒歩約15分、「公園東口駅」徒歩約15分
TEL 06-6876-2151
開館時間 10:00〜17:00(入館は16:30まで)
休館日 水曜日(祝日の場合は開館、翌日が休館日)、年末・年始
入館料 一般420円、高校・大学生250円、小・中学生110円(特別展の観覧料は別途)
※団体20名以上で割引
公式サイト http://www.minpaku.ac.jp/

写真・文 : 堀越 英美

        
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堀越英美
子育てママ業を営みつつ、間隙を縫っておもしろ文章を産む機械、って書き方アレだけど、書けば自動的におもしろいのが、demiさんこと堀越英美さんであります。

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