お金がかからなくて空いてて面白い公共施設=ハコモノを求めて節約ミセスが子連れで日本中をうろちょろしまーす!   ( 第1回から読む )

第15回 京都大学総合博物館

育児雑誌のクリスマスプレゼント特集をぱらぱらと読んでいたときのこと。天体望遠鏡やロボットといったいかにもなプレゼントがお勧めされるなか、京都大学総合博物館教授の「布製野外調査鞄」「京都大学総合博物館 地質野帳」という地味なセレクトがひときわ目をひきました。子どもに媚びる気ゼロ、というか我が道しか見えていない。とにかくフィールドワークが好きだし子どもたちもきっとそれを好きになるはずだし、というまっすぐな気持ちに射抜かれ、京都大学総合博物館を訪れてみることにしました。

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「探検大学」と言われるくらいフィールドワークがさかんな京都大学。2001年に設立された同博物館には、研究者たちが世界各地から収集してきた学術標本資料約260万点が収蔵されています。

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常設展は「自然史」「文化史」「技術史」コーナーに分かれています。そのうち「自然史」コーナーは撮影可とのこと。

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京都大学霊長類研究所で勉強しているチンパンジーのアイと同じ実験を体験できるコーナー。数字が一瞬表示されたあと、位置を覚えて順番にタッチ。数字の順番自体うろおぼえの2歳児はもちろん、大人でも無理ですこれ。チンパンジーの子どもの瞬間記憶力は人間の大人よりすごいらしい。大人は使わない能力なので、成長の過程で退化していくのだそうです。そういえば駅名や国旗を丸暗記してる子どもって、大人になっても覚えているのでしょうか。

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1965年から野生チンパンジーの観察を続けている京都大学の映像データベースを見ることができます。「だまして石を奪う」「石を取り返す」「あきらめない」「石器が使えない若者」。若者の石器ばなれが進むチンパンジー界……と思いきや「石器が使えないおとな」もいました。

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息子に毛づくろいをしてやり、息子がお礼に毛づくろいをしてやろうとしたスキに石を奪う計算高いチンパン母。悪いなあ。

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石器が使えないおとなは、子どもに種を割ってもらっています。ヤフオクの韓流スターグッズを息子に落としてもらう母、みたいな光景。石器ディバイドだ。

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オス同士が互いに尻をつけあう「尻つけ」。競争心や緊張を性的興奮で発散して、攻撃性を鎮めようとする行為なのだと言われています。「前見て歩けやこのサル!」「ああ!?サルがいきがって二足歩行してっから悪いんだろが」「やんのかコラ」「来いよオラ」「とりあえず尻つけようぜ」「ああ」「……ふぅ」「……ふぅ」みたいな?

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ほかにも親が子どもをくすぐったり、よその赤ちゃんをあやしたり、かなり高度な遊びをしているようすがビデオに収められています。一番印象深かったのが「死体を使ったディスプレイ」。ミイラを引きずり回すオスの衝撃動画が……。何をディスプレイ?死体に動じないワイルドさ?オレに逆らったら干すぞアピール?説明が特になかったのでもやもやしたまま……。

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無念さを漂わせるモグラの標本と頭蓋骨。なぜ唐突にモグラが出てくるのかというと、

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こちらはモグラの巣にだけ生えるキノコに注目した相良直彦・京都大学名誉教授の研究結果を展示しているコーナーなのでした。教授は土中にあるモグラのトイレを栄養分として生えるキノコ「モグラセッチンダケ」(学名ナガエノスギタケ)とモグラと樹木の共生関係を世界で初めて発見した人です。これは教授が持ち帰ってきたモグラのトイレとキノコの標本。教授退官後も「きのこ-モグラ学」をただ1人提唱し、野山をフィールドワークしているそうです。モグラのトイレを追い求める人生、かっこいい。

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昆虫標本も大充実。特にアリの標本がたくさんあって、間近で見ると「よくこんな小さなものを分類する気になったね!」と心揺さぶられます。ちなみに有名サイト「日本産アリ類データベース」によると現在名前が付けられているアリは約8,800種類で、分類されていないものを含めると2万種を超えるそうです。2万…どうやって見分けるんだか見当が付きません。蟻酸が雨上がりの犬の匂い、とかそういうの?

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マレーシアのジャングルを再現したジオラマ。

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これがウワサの京大特製「布製野外調査鞄」

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調査鞄や野帳(フィールドノート)はミュージアムショップ「ミュゼップ」で購入できます。ほかにもイトトンボの銀ブローチとか、マンモスの毛とか、お湯をそそぐと恐竜の骨格が浮き出るマグカップとか、味わい深いグッズがいっぱい。

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1階のエントランスホールでは、月イチのイベントとしてノートルダム女学院高校科学クラブによる出張授業の真っ最中。理系女子高生たちが上品そうな親子連れにメダカの誕生する瞬間などを見せていました。あまりにまぶしい賢さオーラ。邪魔にならぬよう、我々は大人しく操り人形で遊ぶことに。

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毎週土曜日開催の「週末子ども博物館」で作られた工作の数々を子ども部屋風に展示。これまた賢そうでステキ。でも我が子の部屋に動物の頭蓋骨がずらずら並んでたらお母さんちょっと心配だな。

まとめ

「フィールドワークって社会学者が女子高生をナンパするアレじゃろ?」程度の認識しかない汚れきった母も、俗世間から遠く離れた飽くなき研究者魂に心洗われる思いがしました。どの展示物をとっても持ち帰るまでの苦労を思うと(特にモグラのトイレ)気が遠くなりそうです。それにしてもチンパンジー動画集は面白かった。ネット公開されたらずいぶん人気動画になるんじゃないかと思います。
(2010年5月30日訪問)

京都大学総合博物館
住所 京都市左京区吉田本町
交通 京阪本線出町柳駅徒歩15分、または京都市バス「百万遍」下車徒歩約2分
TEL 075-753-3274
開館時間 9:30〜16:30(入館は16:00まで)
休館日 月曜日、火曜日(平日・祝日にかかわらず)、年末・年始(12月28日〜1月4日)
入館料 一般400円、高校・大学300円、小・中学生200円、70歳以上および身体障害者手帳所持者は入館無料。
※団体20名以上で割引あり
公式サイト http://www.museum.kyoto-u.ac.jp/

写真・文 : 堀越 英美

        
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堀越英美
子育てママ業を営みつつ、間隙を縫っておもしろ文章を産む機械、って書き方アレだけど、書けば自動的におもしろいのが、demiさんこと堀越英美さんであります。

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