お金がかからなくて空いてて面白い公共施設=ハコモノを求めて節約ミセスが子連れで日本中をうろちょろしまーす!   ( 第1回から読む )

第12回 虫の詩人の館(ファーブル昆虫館)

東京・文京区の区長が、男性首長としては日本で初めて育児休暇を取ったとかでニュースになっていました。そんな進歩的な文京区には、きっとハハコに優しいハコモノがあるに違いない。そう思って文京区のホームページをのぞいてみたところ、「虫の詩人の館」という気になる名前のハコモノが。虫の詩人の館……叫ぶ詩人の会的なニュアンスで? 虫がポエトリーリーディング? 虫なりに社会にプロテストしてみたり? わあ、気になる〜。

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金・土・日曜日の13:00〜17:00しか開館していないなんて、脱サラしたオヤジが山奥で経営している蕎麦屋みたいですが、外観は実にキュート。南フランス出身の建築家が繭をイメージして設計したそうです。ランボーやボードレールを専門とする仏文学者・奥本大三郎教授が、2006年に千駄木の自宅敷地に開館したという虫の詩人の館。日本アンリ・ファーブル会という虫大好き人間で構成されるNPOが管理運営しています。

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フランスの博物学者アンリ・ファーブル『昆虫記』に触発されて奥本教授が集めた虫の標本やファーブルグッズが展示されています。モニターに映っているのは『ミクロコスモス』というおフランスの虫ドキュメンタリー映画。メイン展示物の虫の標本は残念ながら撮影不可ということで、その他の展示物をパチパチしていきたいと思います。

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数々の昆虫ソングを残したファーブル。「コロコロ コロコロ コオロギは/鳴いているよ 土の中(略)/自分で掘った巣の中で/戸口に灯りもないけれど/おひげをなめておしゃれの最中」(「コオロギの歌」)。これはポエミィ。虫の詩人ってこういうことだったんですね。「ねえナナフシ、あたしたちの出会いを覚えてる?」(蜂)とかそんなんじゃなくて本当によかった。

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入場は無料ですが、グッズ販売の収益で館の運営費の一部がまかなわれています。フンコロガシの絵はがきを買おうとボランティアの方に声をかけようとしたのですが、昆虫好きの女性2人組と昆虫トークに花を咲かせている真っ最中。終わるまで待っていようと思っていたら全く終わる気配がなかったので、強引に割り込んで買っちゃいました。商売よりもオタトークのほうが優先されるあたりに、マニアの心意気を感じます。ちなみに館内、昆虫好きの男の子よりも大人の女性のほうが若干多め。むしろ男の子は「おれ昆虫興味ねえし…」とふてくされて「バカッ!あんたがカブトムシ好きっていうから連れてきたのに」とお母さんに怒られていました。男の子はカブトムシとクワガタのバトルが大好きだけど、バトル以前にここの虫、おおむね死んでますからね。

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『月刊むし』のバックナンバーのほか、増刊号『オオクワガタ!』も販売中。「美形オオクワガタコンテスト結果発表!」「スクープ!日本で一番珍しいクワガタムシ ヤエヤマコクワガタ採れる」「オオクワガタは顔で決まる」「70mmオーバーが簡単に出せる! 驚異のマット飼育法」など、気になる記事が満載です。

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地下に降りると子ども向けの読書&お絵かきコーナーも。昆虫関係の図書が並ぶ中、なぜか積み上がる『サライ』。

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ときには残酷な答えも辞さない昆虫ボランティアの皆さん。自然界ではマツムシ・デラックス的な処世はありえないんですね。ちなみに「なぜ虫は小さいのですか」という8歳児の質問には、「小さくてうごめいているものを虫とよぶことにしたのです」という回答が。そんなざっくりした定義だったとは、この年まで生きてきて全く知りませんでした。お恥ずかしい。

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「ニジイロクワガタ」の成虫。世界で一番美しいクワガタだそうです。ねえナナフシ、あの頃のあたしには取り巻く世界の全てがみんな虹色に輝いて見えたんだよ……今は埋もれてるけど……(クワガタになりきりポエム)。

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ファーブルの生家を再現。ただしファーブルの家は貧しかったので、こんなにたくさんモノはなかったという注意書きがあります。きっと古い民具を集めていたら、止まらなくなってしまったのですね。手前の引き出しの中には、当時の大きなパンまで再現されていました。

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カプセル自販機で買ったカメと庭で一休み。結局娘が一番注目していたのは、水槽の中のタニシでした。虫めづる姫君になるにはまだ早かった。

まとめ

珍しい蝶を捕まえたおじさんが網ごと見せにきたり、庭でボランティアの皆さんが昆虫の冬眠について熱く語らっていたりして、まるで都会の隠れ家というか、隠れ昆虫サロンのような不思議な空間でした。そして物販コーナーにあったDVD『やくみつるの昆虫審議委員会』からも感じられる、昆虫界人脈の意外な広がり。少年の心を忘れない大人がたくさんいるって、素敵なことですよね。でも『サライ』を初めとして館内をそこはかとなく漂う「悠々自適」感につい妬ましさがわき上がってしまうのは、ロスジェネゆえのヒガミでしょうか。自分のコレクションで建てた博物館が同好の士のサロンになるって、ある意味オタクの夢の終着駅なんじゃないかと思います。
(2010年3月13日訪問)

虫の詩人の館(ファーブル昆虫館)
住所 東京都文京区千駄木5-46-6
交通 JR山手線・京浜東北線「西日暮里駅」
「田端駅」より徒歩12分
東京メトロ千代田線「千駄木駅」1番出口
南北線「本駒込駅」2番出口より徒歩10分
TEL 03-5815-6464
開館日 金・土・日
開館時間 13:00〜17:00
入館料 無料
公式サイト http://www.fabre.jp/

写真・文 : 堀越 英美

        
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堀越英美
子育てママ業を営みつつ、間隙を縫っておもしろ文章を産む機械、って書き方アレだけど、書けば自動的におもしろいのが、demiさんこと堀越英美さんであります。

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