お金がかからなくて空いてて面白い公共施設=ハコモノを求めて節約ミセスが子連れで日本中をうろちょろしまーす! ( 第1回から読む )

第6回 松戸市立博物館

大家族もののテレビって面白いですよね。あの、他人の家にずかずかと上がり込んで生活感丸出しの家屋をのぞき見る感じが。ぶっちゃけ大家族じゃなくてもいいのにと思います。むしろ夫婦2人、子供1人とかのほうが生々しくて面白いかも。『大改造!!劇的ビフォーアフター』も、アフターいらないくらいです。そんな生活感マニアにお勧めなのが、千葉県にある松戸市立博物館。昭和30年代の常磐平団地2DKに住まう夫婦の暮らしを丸ごと再現した展示で有名です。

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壁にかけられた東郷青児の複製画、本棚には岩波書店の日本資本主義講座がひとそろいに、日本文学全集と百科事典。テレビ台にはジャズのコンピレーションレコードがこれみよがしにたてかけられ、ハイソっぷりをアピールしております。この展示を企画した学芸員・青木俊也氏の著書『再現・昭和30年代 団地2DKの暮らし』によれば、この部屋の住人は東京の大学を卒業した電気メーカーサラリーマン・兼二郎(29歳)と同じ会社のサークルで知り合った高卒の妻・陽子(27歳)、その長女・真理子(1歳)という家族設定になっているそうです。今だったら臨海副都心のタワーマンションに住み、3輪バギーに子供をのせてららぽーと豊洲でお買い物する若夫婦といったところでしょうか。

「ねえ、あなた」
「なんだい、ハニー」
「この部屋にいると始終誰かにジロジロ見られているような気がするのよ」
「ハヽヽ、近頃流行りの団地病かい。アトラキシンでも飲みたまえ」

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この博物館は『ROADSIDE JAPAN 珍日本紀行 東日本編』(都築響一)で知ったのですが、同書に掲載された1994年の写真からこの部屋がだいぶ様変わりしているのに気づきました。昔は足踏みミシンもベビーベッドもなかった。ひょっとすると第2子が生まれて上の子から隔離するためにベビーベッドが置かれ、上の子の幼稚園準備かなんかでミシンが導入されたのでしょうか。すごい、時が止まっているようでゆっくり進んでいる部屋。あと15年後ぐらいに訪れたら旦那のキャバレー通いがバレて家庭内別居してたりして。既婚女性的には地味に目が離せない。

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ウキウキ度の高いダイニングキッチン。

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味の素のハイミーすらおしゃれに「hi-me」。

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当時の主婦の間で流行っていた飾り棚。載っているのが煙草箱の傘や毛糸の服を着せられたキューピーじゃないあたりがハイソです。でもやっぱり人形のセンスが謎。

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かわいい子ブタのお皿に手塚治虫調の動物が描かれたコップ。60年代にシンプルモダンの言葉なし。隙あらばキャラクターと柄物が攻め入ってくる。

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団地を出ると、外壁まで再現されていました。

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昭和35年に常磐平団地ができる前はこんな農村だったわけで、いかに団地住まいが憧れの存在だったかがわかります。

団地ばかりがフィーチャーされがちな松戸市立博物館ですが、団地、20世紀梨、虚無僧、獅子舞の4テーマを中心に、松戸市にまつわるさまざまな展示があります。

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虚無僧ドーン!

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埋葬ドーン!

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へー、きみフォークでうどん食べるタイプなんだー。

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「森から出土されそうなファッションだね」ってよく言われるんです。

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松戸市をはじめ関東に伝わる「三匹獅子舞」の歴史が見られる獅子舞シアター。三匹獅子舞とは、1匹のメス獅子舞を巡って2匹のオス獅子舞が争ったりするドリカム編成な獅子舞のことです。「歯を5回カチカチ言わせたらア・イ・シ・テ・ルのサイン」みたいな獅子舞ラブストーリーが繰り広げられていたりするんでしょうか。

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昔の獅子舞はこんな。

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さらにさかのぼって17世紀初頭に行われた大群衆の輪踊りを描いた『豊国祭礼図屏風』。あら、これは何のコスプレかしら。

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まさかのたけのこ。祭りと聞いて張り切って着ぐるみを作ったはいいものの、手が出ないので踊りの輪に入れずぼんやりたたずむオッサン。道理で浮かない顔です。この反省をふまえて手を出し放題のコスプレ「獅子舞」が生まれたんでしょうか。

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子供を置いてけぼりにしすぎたので、プレイルームで一休み。

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縄文時代の布を編む体験ができます。リリアンみたいな感じなので、小学生以上向けでしょうか。

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もっと小さい子向けに、出土した貝殻で遊べるコーナーも。

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子供はミュージアムショップのはにわキーホルダーに夢中。虚無僧ストラップ、虚無僧絵はがき、団地絵はがきなどここでしか買えなそうなマニアックな松戸グッズを購入できます。

まとめ

最近は昭和レトロブームで昭和30年代の街並みを再現したテーマパークもできたりして、この博物館の先進性もやや薄れつつあるような気もしますが、小物一つ一つに住人のセンスや人生まで感じさせる作り込みはそんじょそこらの商用施設には負けません。「第2子生まれた展開」も、『再現・昭和30年代 団地2DKの暮らし』によれば実在の写真や一家から提供された膨大なカット数の家族写真をもとに生活の軌跡を再現した結果生まれたものだそうです。レトロな雰囲気だけじゃない、この実証性こそがハコモノの本領。これだけリアリティがあればジロジロ観察(そして妄想)しがいがあるというものです。子供ウケという点では微妙ですが……。子連れは近くの総合公園「21世紀の森と広場」で子供のご機嫌をとってあげてください。(2009年8月9日訪問)

●松戸市立博物館
住所 千葉県松戸市千駄堀671
交通 新京成線八柱駅またはJR武蔵野線新八柱駅から徒歩約15分。または松戸新京成バス八柱駅発小金原団地循環行き「公園中央口」で下車すぐ。またはJR常磐線北小金駅から松戸新京成バス八柱駅行き「公園中央口」で下車すぐ。
TEL 047-384-8181
開館時間 9:30〜17:00(入館は16:30まで)
休館日 月曜日(月曜日が祝日の場合は翌日)、毎月第4金曜日、年末年始(12月28日〜1月4日)
入館料 一般300円(団体240円)、高校生・大学生150円(団体100円)、小学生・中学生100円(60円)、市内在住70歳以上・市内在住の身体障害者手帳または療育手帳の交付を受けている人とその介護者無料
公式サイト http://www.city.matsudo.chiba.jp/m_muse/

写真・文 : 堀越 英美

        
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堀越英美
子育てママ業を営みつつ、間隙を縫っておもしろ文章を産む機械、って書き方アレだけど、書けば自動的におもしろいのが、demiさんこと堀越英美さんであります。

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