お金がかからなくて空いてて面白い公共施設=ハコモノを求めて節約ミセスが子連れで日本中をうろちょろしまーす! ( 第1回から読む )

第4回 コスモアイル羽咋

日本の次期ファーストレディがUFOに乗って金星に行ったり行かなかったりしたニュースが世界中を駆け巡ったほんの少し前、地方紙でひっそりと報じられていた記事に目が釘付けになってしまいました。UFO研究家の矢追純一氏が、石川県羽咋市の宇宙科学博物館「コスモアイル羽咋」の名誉館長に就任したとのこと。公立の施設(※1)の館長にミステル・ヤオイを採用するなんて、きっと懐の広いステキハコモノに違いありません。これはもう行くしか!

「UFOの町」をテーマに町おこしをしているという石川県羽咋市。なんでまたそんなことになっているのかというと、

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UFO型の仏具「そうはちぼん」のような怪光が空を飛ぶという「そうはちぼん伝説」が江戸時代より伝わる羽咋市。町おこしのテーマを探していた青年団が地元の気多大社にある平安時代の古文書をひもといてみたところ、神の力で空を飛ぶ不思議な玉の伝説が記されていたそうです。「そうはちぼんも飛んでたことだし、これはもうUFOの町と呼んでもよくね?」「じゃあUFOで町おこしすればよくね?」

そうと決まれば彼らの行動は早かった。「羽咋の青年12人がUFOによる町づくりを始めました」という手紙を国内のマスコミのみならず、旧ソ連のゴルバチョフ書記長やレーガン米大統領(どちらも当時)にまで送り付けたそうです。レーガンもまたUFO信者で、ゴルビーと「もしアメリカが宇宙から攻撃を受けたら助けてね」という協定を結んでいたと伝えられているくらいなので、当時としてはそう突飛な行動ではなかったのかもしれません。宇宙人とかUFOとか真顔で言ってるのは我らがファーストレディだけじゃなかったんですね。ゴルビー&レーガンからのお返事はなかったものの、UFO国際シンポジウムを開催してNASAのツテを作るなどの青年団のがんばりが実を結び、平成3年に旧自治省のリーディングプロジェクト指定を受け、コスモアイル羽咋の建設が決定したのでした。

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というわけで、ゴージャス感あふれるハコモノがひなびた町にドーンと。ちなみに右側にあるいかにもおもちゃっぽいカラーリングのロケットは、実際に弾道飛行を行ったアメリカ製のマーキュリー・レッドストーン・ロケットだそう。以下、「え、こんなものがこんなところ(失礼)にあっていいの?」というスーパービックリドッキリメカが続々登場します。

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大気圏再突入時の摩擦熱で焼けてしまったという赤茶けた表面が生々しい旧ソ連製の「ヴォストーク帰還用宇宙カプセル」(実物)。人類初の有人宇宙飛行を実現したという貴重なメカがガラスケースもなしに展示されてていいのだろうか思いつつ、説明プレートを見ると「発ガン性物質が含まれているので触れてはいけない」という内容の注意書きが。怖! 中に入っているのはマネキンですが、本当に大人1人入れるくらいのスペースしかない。もちろんこんな丸腰で地球に無事着地できるはずもなく、説明プレートによればガガーリン(中の人)は高度6000mでカプセルから座席ごと射出され、パラシュートにて着地したそうです。再び怖! そんな計画を立てるほうも立てるほうですが、やっちまったガガーリンもすごい。そもそもこれに搭乗すること自体、相当な勇気が必要だと思われます。

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館内に浮かんでいるのは、旧ソ連製の「モルニア1号通信衛星」。いかにも飾り用のオブジェっぽいですが、モルニア1号のバックアップ機であり、つまり実物。超吊るされてるんですけど、旧ソ連の皆さんいいんですか。

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旧ソ連最後の月面探査で使われた「ルナ24号月面着陸船」。こちらも実物のバックアップ機です。てっぺんにあるボールに月面の土を詰め込み、地球にぽーんと発射するというスケール大きめのロボコン大会っぽいしくみ。上記3点についてはロシア宇宙局からの譲渡および内容証明書の現物と翻訳が展示されていました。ロボコンとかナメたこと言ってごめんなさい。

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これはNASA製の月面・火星探査機「ルナ/マーズローバー」(実物)。おそらく研修で訪れたのであろう技術者らしきグループが「すごいな〜本当に火星を走ってきた車がすぐ触れそうなところにある」と少年のように瞳をキラキラさせながら感激していましたが、説明プレートを見ると実験用に作られた0号機らしい。でもすごいことですよ。NASAの特別協力で貴重な0号機が恒久貸与なんて。「ちょうだい」って言ってくれるようなものじゃないですよ普通。

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アメリカ合衆国初の有人飛行用宇宙船「マーキュリー宇宙カプセル」(模型)。中は身動きがとれないほど狭く、1.8メートル以下の人しか入れないそうです。体格以前に、精神面がよほど強くないと宇宙船に乗るのはムリ! と改めて実感させられました。しかしどれもこれも昔のSFアニメっぽくてカッコイイ。どっちかというとSFアニメが真似してるんでしょうけど。

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有名すぎる「アポロ司令船」(の模型)。銀色のシールドは本物だそうです。足もとには映画『アポロ13』でトム・ハンクスが宇宙服を保管していたというトランクがわりと無造作においてあります。貴重なのかそうでもないのかよくわからない。

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「アポロ月面着陸船」。これも模型ですが、周囲に配置しているケーブルコードは予備用の本物で、ここの展示で使い切ってしまったそうです。こんな感じで、わりと真面目に米ソの宇宙開発競争の歴史をおさらいできる歴史的な展示物がいっぱい。あれ? UFOはどこー?

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ギャッ!

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フジテレビ系「UFO墜落から48年 宇宙人は本当に解剖されていた!!」(1996年2月放送)のために製作された「ロズウェル事件」宇宙人の模型。秘宝館ライクなおどろおどろしさに、昭和の残り香を感じます。こういうのが普通にテレビで放送されていた時代だったからこそ、「UFOで町おこし」が国に受け入れられたのでしょうか。この手のオカルト番組はすっかりタブーになっちゃいましたね。

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あからさまにトリックじゃろ! というUFO写真が壁いっぱいに。トリックが証明された写真についてはその旨説明書きに記されています。ウソでもいいんです。UFOが好きだし写したいというそのスピリットが大事だから。

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米空軍UFO調査機関が収集したUFO事例ファイル「プロジェクト・ブルーブック」が読めるというお宝コーナー。「UFO関連公文書日本語対訳」なんかもあって超貴重。にまじって、フジテレビの番組台本も。以下抜粋<梶原「石井さんは、『河童』という映画を制作されたわけですけど、映画に登場する河童は宇宙人なんだそうですね。」石井(答える/石井竜也の宇宙人論)>。聞きたかった、石井竜也の宇宙人論。

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2階にある会議室。コスモアイル羽咋設立の中心人物である羽咋市1.5次産業振興室総括主幹の高野誠鮮さんが寄付したUFO資料類が収められています。展示しきれなかったその中身は、CIAの報告書から『ムー』バックナンバーまで。普段は鍵がかかっているので中には入れません。

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あっ矢追さんだ! 8月7日の名誉館長就任記念講演会では、「オタマジャクシの決死のスカイダイビングの理由」「宇宙人にとっての人間のあり方」などを語ってくれたそうです。顔色が悪いようですが大丈夫でしょうか。

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エレベーターにはちょっとした仕掛けがあるので、心臓が弱くない人は乗ってみてください。私は壊れたのかと思って若干パニックになりました。ぜったい宇宙飛行士に向いていない。

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「エレベーター怖かったでしょ〜お子さん泣かなかった?」というオバチャンの言葉に誘われるように売店へ。子供は平気です。ただ母が。

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80年代ファンシーとNASAの奇跡のマリアージュ。

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久々に見た記念メダル販売機。ハイテクな展示室と土着的な売店のギャップにハコモノらしさがジワリ。

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「帰るよ〜」と言っても、土星が載っているなぞのオブジェにぴったり背をつけてなかなか離れようとしない娘。

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母も一緒に同じ体勢をとってみた。ラクチンだし背中がひんやりとして気持ちいい〜。真っ青な空にすっくり立つ白いロケットは、「また宇宙行きたいすなー」とでも言いたげな風情。こりゃ離れられませんわ。

まとめ

オカルトが白眼視される時流もなんのその、ロケットとUFOをともに「センス・オブ・ワンダー」として愛する懐かしくも牧歌的な世界に癒されます。よくよく考えてみれば、UFOが空を飛ぶのも人間が鉄の塊に乗って月まで行ってしまうのも、不思議であることには変わりはない。不思議を解決する力を育てるためには、科学をわかりやすく教えるだけじゃなくて、UFOや妖怪みたいに面白くてわけがわからないことをじゃんじゃん浴びせて不思議大好きっ子にするのがいいのかもしれません。今年は同館開設を支援した羽咋ミステリー倶楽部と不可思議倶楽部(金沢市)の設立20周年でもあるそうで、石川県にはいまもSF(すこし不思議)を愛する心が息づいているのでしょう。仏具もおたまじゃくしも降ってこざるをえない石川県の特殊な磁場の一端に、なんとなく触れたような気がします。

(2009年8月29日訪問)

※1 2007年4月から指定管理者制度が導入され、公募によって選ばれた民間企業「Project Do」が運営。

●コスモアイル羽咋
住所 石川県羽咋市鶴多町免田25番地
交通 JR七尾線「羽咋駅」から徒歩8分
TEL 0767-22-9888
開館時間 8:30〜17:00(入場は16:30まで)
休館日 火曜(7月20日〜8月31日を除く。祝日に当たるときはその直後の祝日でない日)
入館料 大人350円、子供200円
公式サイト http://www.hakui.ne.jp/ufo/

写真・文 : 堀越 英美

        
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堀越英美
子育てママ業を営みつつ、間隙を縫っておもしろ文章を産む機械、って書き方アレだけど、書けば自動的におもしろいのが、demiさんこと堀越英美さんであります。

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